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ネパールは日本人が移住するに適した国なのか?(地獄篇)


カトマンズにありながらも、静かなテクの一角

怒涛の経済成長中のネパール、日本との物価差は日々縮小するばかりだ。

だが、そんなネパールでも住んでみたいという奇特な方もおり、私の経験も交えて考えてみたいと思う。

*今後もネパールは中長期的に安く過ごすことが出来る国であり続けるのか?

他の記事でも既に述べているように、このままネパール国内の大きな政治的混乱や世界的な金融危機や経済危機が起こらず、インドと中国の関係が特に悪化もしなかった場合、両国に挟まれた経済圏のネパールは中国の一帯一路政策もあり、今後更なる経済発展をとげる可能性が非常に高い。

また電力事情も改善しつつあり、中国と現在工事中の鉄道で結ばれるようになれば、広大なネパール南部のタライ平原に工場が多く出来るだろうし、そうなれば工業国へと変貌する足掛かりともなる。ネパールルピーはインドルピーと連動しており、インドも絶賛経済発展中で、今後長期的なネパールルピー高になることも十分に予測することが出来る。

円安になれば、ネパールのインフレとネパールルピー高と円安のトリプルパンチが移住したあなたを襲うだろう。もし中国とインドが歴史的な融和政策を取るようになった場合、それはさらに加速する。

ネパール政府は2030年までに中所得国になることを目指しており、2030年には360万人の労働者がネパールで不足する可能性があるという予測まであるのだ。

なかなか一筋縄ではいかないだろうが、今後もネパールの経済が発展し雇用状況が好転し人手不足となれば、ネパールの人件費は飛躍的に跳ね上がるだろう。現在ですら昔からネパールで事業をしている日本人からは「人件費がものすごく高くなった」と嘆く声も聞かれ、既に現地で人を雇って製作していた一部の製品の生産をやめた人もいる。

こうしてインフレだけではなく、ネパールの人件費も急上昇しているのが現状であり、ネパールルピーを主体に稼ぐ人々もどんどん豊かになって行っている

反面、日本人が円だけでの収入を頼りにネパールでリーズナブルに長期間過ごすことは、近い将来困難になることが予測される。つまるところ、これほどのスピードでネパールと日本の経済格差が縮小していくと、日本で過ごす生活費とビザ料金や旅費を含めたネパールで滞在する金額も急速に変わらなくなって行くだろう。

またそれに伴い、激減していく日本人観光客相手の商売も難しくなる。ネパールは滞在費が安いことを主目的に訪れる日本人が昔から非常に多いからだ。

*国内の政治と中国インドの戦争リスク

ネパール南部に広がる広大なタライ平原、ここに昔から住むインド系の人々をマデシと呼ぶ。

ここはネパールの火薬庫でもあり、近年タライ地域の人口の大半を占めるマデシ住民と政府との衝突やいざこざが絶えない地域だ。タライ地域の独立を叫ぶ武装集団もおり、ネパールとインドの関係が悪い時期に彼らが大規模に蜂起した場合、インドが彼らの側につくことも予想される。もしそうなれば、ネパール国軍に中国が協力するだろう、代理戦争のリスクも実は十分に考えられるのだ。

私の知り合いにネパール軍の幹部候補生がいるが、秘密裏に中国軍との合同訓練を数か月の長期に渡り中国国内で行っていたという事実もある。これは日本国内で自衛隊とアメリカ軍が合同訓練を行っているようなもので、中国とネパール軍の結びつきの強さをうかがわせるものだ。

近年まで内戦を戦ってきたネパール軍の兵士たちは愛国心が強く、とても勇敢だ

近年まで内戦を戦ってきたネパール軍の兵士たちは愛国心が強く、とても勇敢だ

また、ネパールは中国とインドに挟まれた特異な国であるがゆえに、両国同士の関係が悪化した場合、ネパールの政治的姿勢によれば戦地になる可能性も少なからずあり、もしならなくてもネパールと両国の国境沿いに住んでいるインド人、中国人の難民が大量に押し寄せて大混乱になる可能性もある。

*ネパールの環境衛生問題

ネパールは狂犬病の汚染国であり、人口10万人あたりの死亡者数は、世界ワースト20位というかなり悲惨な状況だ。ご存知の通り、狂犬病が発病すれば致死率は100%に近く、日本人の私たちが普段目にすることの無い感染症なので安易に考えがちだが、とても危険である。

CDC(米国疾病予防管理センター)にざっとあげられているだけでも、日本脳炎、サイクロスポラ、ジアルジア、A・E型肝炎、腸チフス・パラチフス、コレラ、結核、ウイルス性呼吸器感染症などがあり、南部に行けばデング熱にも注意が必要で致死的な毒蛇も生息している。何より、都市部では大気汚染がとても深刻で微小粒子状物質であるPM2.5やPM10に長年晒されるとCOPD(慢性閉塞性肺疾患)になる可能性もあるのだ。

特にネパールで風邪になると先進国の人間は重症化しやすいことも付け加えておく。

日本ではそうそうかからない病気や感染症のオンパレードだ。

*地震のリスク

地震だー!

2015年4月25日に起こったネパール地震

私は持てる限りの援助物資を持って、24日後の5月19日にネパール入りをした。

地震1か月後のバクタプル市街

地震1か月後のバクタプル市街

柱が細い鉄筋コンクリートの建物も崩壊した、1Fのバイク屋では数十台の新車のバイクがぺしゃんこに

柱が細い鉄筋コンクリートの建物も崩壊した、1Fのバイク屋では数十台の新車のバイクがぺしゃんこに

日本人生存者の情報を求める在ネパール日本大使館の張り紙

日本人生存者の情報を求める在ネパール日本大使館の張り紙

ネパールの建物が 脆弱であることは十分に知っていたし、予想された被害ではあったが、以外だったのは都市部では特に食糧には困らなかったという話が多かったということ。もちろんゴルカ郡などの被害の大きかった山村部ではその限りではない。

ただ、ネパールで地震に遭遇した場合、それが険しい山村や都市部で逃げ場の少ない場所であれば致命的になることが十分に予想される。山村の場合は落石や地滑りが起こるし、都市部の場合は脆弱な建物というだけでなく、屋上のテラスや窓の外側のひさし等には、地震後の今でも鉢植えを固定せずに置いている家も数多くあり、そういったものが容易に頭上から降ってくるのだ。

*総括

ざっとあげてみたが、これ以外にも水不足や、定期的に起こる燃料不足などあげればきりがないものの、近年特にお金がものをいう社会になってきたネパール、お金さえあればそこそこ快適な生活を送ることが出来るのもまた実情だ。そしてそれに必要な金額は今後も上がり続けるだろう。気が付けば、ネパールの中流層の人々よりも自身のネパールでの生活レベルが貧しいものになっていたという時代は目の前である。

と、こういうふうにとりあえず悪い点だけをあげてみたが、まだゆるい魅力あるネパールは残っている。

それが消える前に存分に味わうことも人生の選択肢の1つにしてみてもいいだろう。

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