ネパール人の個性と集団性

ネパールが好きな人にネパールのどこに惹かれたのか聞くと、まず一番に上がるのがネパール人の国民性、つまり「人」である。

基本的に温和で友好的、世話好きで世間話が大好きで、好奇心が強く、すぐ外国人と友達になりたがる積極性も、先進国の人間から見ればとても新鮮に映るだろう。

だがちょっと待って欲しい。

長年ネパールに関わっている方はご存知だと思うが、彼等は集団になると、それまでの温和な個人から凶暴な集団に豹変することもあるのだ。

私が体験した、いつも長期滞在する友人の村でのいざこざを上げてみよう。この村はカトマンズ郊外の衛星都市、バクタプルの外れにあり、チェトリ3割とネワール6割、残りは他民族という民族構成の村である。

ある日、同じ村人同士のネワールの若者Aとチェトリの男性Bが、いさかいを起こした。

二人とも、私がよく知っている人物で、普段は穏やかな典型的な「ネパール人」である。

ところが、後で聞くとちょっとからかっただけのことが、口喧嘩になり、やがて「殺してやる!」「家に火をつけてやる!」となり、村全体を巻き込んだ大騒動にまで発展した。

同じ民族同士ではなく、彼らがチェトリとネワールだったことも、騒ぎが大きくなった根底にあるのだろう。一つの村に複数の民族が暮らしていることはよくあることで、傍目から見ると、微笑ましく協力し合いながら、異なる民族同士仲良く暮らしているように見えるが、実は見えない壁も多いのが実情だ。

実際、村の酒場でも同じ民族同士でたむろしていることが多かったり、同じ村人の他民族の陰口も聞くこともある。プライベートでは同じ村人であっても、他民族同士では日常的につるまない事のほうが多いのだ。

のどかな農村風景がそれを押し隠しているのである。

話を戻そう。

口喧嘩がヒートアップし、最初は双方が殴りかかろうとするのを村人達が止めていたが、なんと、やがて双方を止めていたチェトリとネワールの村人同士の騒動にまで発展したのだ。

そもそもなぜここまで騒ぎが大きくなったのか?

実は双方が各々の知り合いの、有力者や地元の政治家、警察官を村に呼びつけたからである。

そして、お互いにそのやり方を非難する応酬となった。

だから収拾がつくまで数時間以上を要した。

結局双方が有力者を呼んだことがきっかけで余計に騒動に火が付いたのである。

ネパールの人々は基本的に警察も政治家もあまり信用していない。

だからこそバンダ(道路封鎖や交通妨害をして抗議活動をすること)があり、時には無理に通行しようとしたバスや車やオートバイを燃やしたり、投石をしたりして実力行使をする。

つまりは暴力に訴え出るのである。

その他には、突発的なNSU「Nepal Student Union」(ネパールの学生運動グループ)のバンダにカトマンズで遭遇し、乗っているスクーターを蹴られたこともある。幸い警官がおり逃がしてくれたのだが、危なかった。