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ネパール人の海外出稼ぎ残酷物語

ネパールは、観光以外にこれといった資源もなく、また流通網が貧弱な内陸国でもあり、これまで長年最貧国の一つに数えられてきた。

だが、近年のグローバル化により、ビザや労働許可証の不要なインド以外の国へも簡単に出稼ぎに行くことが出来るようになり、特に中流層以下の人々が多く出稼ぎに行くのが、マレーシアや湾岸諸国だ。

カタール・ドバイ・サウジアラビア等、オイルマネーで潤った国々へ、建設業や工員、運転手、コックやウエイター、ホテルマン、掃除夫、ハウスメイドとして出稼ぎに出る人々。

だが、そんな彼らを待ち受けているのは、過酷な労働環境だ。

マレーシアは労働環境は比較的良好だが、湾岸諸国の特に建設労働では労働環境は劣悪で、安全対策もおざなりで死亡事故も多く、また中には夢破れて海外で自殺するネパール人も多い。カトマンズのトリブヴァン国際空港では、湾岸諸国や諸外国から運ばれてきた遺体の入った棺を目にすることが、近年とても増えてきた。

火葬の火が絶えることのないパシュパティナートのガート(火葬場)

火葬の火が絶えることのないパシュパティナートのガート(火葬場)

ガート横に積まれている、海外から送られてきた空の棺、その多くは湾岸諸国から運ばれてきたものだ

ガート横に積まれている、海外から送られてきた空の棺、その多くは湾岸諸国から運ばれてきたものだ

私はよく、パシュパティナートのガートに行くのだが、その傍らにはこの写真よりも多くの、海外から運ばれ火葬が終わり空になった棺が、小山のように積まれていたこともある。

ある日、空港からガートに運ばれてきて間もないのだろう、まだ中に死者が横たわっている棺がガート横で火葬を待っていた。見ると、やはり湾岸諸国から送られてきたシールが付いている。

開けられた棺からは死者の顔が見え、その顔はまだ若く30代半ばだろう。

その棺にしがみつきながら、10代であろう少女が「ダイ!ダイ!(兄さん!兄さん!)」と号泣しながら叫んでおり、あまりにも胸が締め付けられる光景に私はなすすべもなく、そこに暫く立ち尽くす他はなかった。

トリブヴァン国際空港。

今日も、多くの人たちがこれから出稼ぎや留学に行くのだろう。

盛装し、鮮やかな橙色のマリーゴールドの花で作られたネックレスをかけた若者達が、見送りに来た家族と別れを惜しんでいる横で、海外から運ばれてきたばかりの棺が、迎えに来る遺族を静かに待っている。

やがて見送りに来た家族と別れ際に、自らの首にかけているマリーゴールドの花輪から少しの花びらを抜き取り、その名も知らぬ棺の上に振りかけて哀悼の祈りをささげたのは、これから海外に行くであろうその若者であった。

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