ネパール人現地ガイドの裏話#
あなたが訪れる初めてのネパール。
特に事前にホテルを取ったり、旅行会社とは契約せずの自由な単身旅行だ。
トリブヴァン国際空港に着き、入国審査も終わり、荷物もちょっと待ったけどなんとか無事に受け取った。
あそこに見えるのは空港出口だ!やっとネパールに着いた!!
・・・すると、あなたの傍に、いつの間にか近づいてくる人々が・・・
あなたが日本人だとわかると、「タクシー?」「ホテル?」「ガイドするよ、1日100ドルね」 などと、日本語で話しかけてくることも多く、中にはネイティブレベルの日本語を話す人もいる。
空港で観光客を待ち構えている人々は、タクシードライバーやホテルの従業員やガイドだけではなく、初めて訪れたネパールで、右も左も分からないあなたの重い荷物を大事に運んでタクシーまで連れて行ってくれたり、タクシーに同乗までして親切にホテルまで案内してくれたり、ご丁寧にも、次の日の朝にホテルにガイドと一緒に来てそのガイドを紹介してくれたり、地元ツアーのある旅行会社に連れて行ってくれたりする人もいる。
実は彼らは、あなたをタクシーやホテル、ガイドや旅行会社に紹介することでコミッション(紹介料)を稼いでいる人々だ。
もちろん、空港にもガイドはいるし、観光名所のチケットカウンター手前や駐車場付近で、訪れる観光客を待っているガイドもいる。観光客がそこに近づくと、素早くガイドが必要かどうか聞いてきたり、その価格や時間などの説明をしてくるのだ。
ネパールには観光客をガイドするための、政府が許認可する公的な資格が2種類あり「ツーリストガイドライセンス」「トレッキングガイドライセンス」と呼ばれるものだ。1人で両方とも所持している人もいる。
ツーリストガイドライセンスを取得するには高いハードルが存在し、5年以上の観光分野の経験だとか、学歴は学士で、主要言語に堪能であること(近年では、観光客が増えてきた中国人や韓国人に対応するための中国語や韓国語の必要性も上がってきている、中でも中国人観光客の増加はめまぐるしいものがあり、中国語を話せるガイドは一財産を築いた人もいて、中国語の語学学校は満員御礼の状態だ)
また、文化・建築・歴史や民族に関する知識や、ネパールの観光システムについても熟知していることが求められる上に、座学などの講習も受けなくてはならない。
トレッキングガイドライセンスを取得するには、2年以上のトレッキングガイドのアシスタントか、ポーターの経験があることなど、なかなかハードなのだ。
だが、ハードルがあまりにも高いために、ガイドをしている人々の免許取得率は体感的にかなり低い。
もちろん、政府に登録し認可された大手の旅行会社やトレッキング会社に勤めているガイドたちは、ほぼ全員免許を持っておりネパール旅行で万全を期したいならば、そういった旅行会社に依頼すると良いだろう。
ガイドライセンスを持たずにガイドをしている人々は、自らの事を「(地域名)・ローカルガイド」と呼ぶ。バクタプルを中心にガイドしているなら「バクタプル・ローカルガイド」と言うわけだ。
彼らが言うには「そのエリアだけしかガイドをしていないから、ガイド免許は持ってなくてもオーケーさ」
と言うが、もちろんそんな法律があるわけでもない。
だが、こういったローカルガイドを政府は特に表立って取り締ってはいない。私の友人や知人には、そういったローカルガイドも多く、長年ガイドをしている彼らの語学スキルや話術や人的ネットワーク、裏情報には脱帽することが多々ある。
そういったローカルガイド達の主な収入源は、ガイド料金以外に前述したタクシーやホテル、そして土産物店やレストランや地元ツアーのある旅行会社に案内し、そこで観光客がタクシーに乗ったり、宿泊や食事や買い物をしたり、ツアーを組むことで、コミッション(紹介料)を得ている。
もちろん、全てのホテルやレストランや土産物店、旅行会社がコミッションを払っているわけではないものの、そういったローカルガイドに高い料率の紹介料を与え、ダサインなどのお祭り時にはボーナスまで払っているお店もある。ガイドが観光客を大勢店に連れてくることで、もたらす利益を重要視しているのだ。
そういった店は大型店であることも多く、その地域のローカルガイドの顔役や世話役になっていることもあり、ローカルガイド達はそういった店の店主を敬意を込めてボスと呼んでいることもある。
5年前のある日、私の友人のローカルガイドの一人が一回の紹介料では破格の250万円を手に入れ、お祭り騒ぎになったことがある。聞けば、イスラエルからの観光客で博物館を経営している人物で、タンカショップに連れて行ったところ、その当時ではバクタプルで最大サイズのアンティークタンカを購入したそうだ。そのタンカの値段はなんと1千万円!!つまりは、25%が彼の懐に入ってきたことになる。
こういったことは一生に一度あるかないかだが、アメリカンドリームならぬネパールドリームを感じさせた。だが、彼らが普段行うガイド料金は安く、30分で300円だとか1時間で500円程のことが多い。
特にローカルガイドには彼らのルールがあり、観光名所やチケットカウンター、駐車場付近で他のガイドと共に待機し自分の順番になり、観光客が来てガイドが必要かどうか話しかけても、もしそれが断られると自分の番はそれで終わりなのだ。日によっては20人近くも他のガイド達が順番を待っている時もあり、次に自分の順番が回って来るまで待たなくてはならない。
バクタプルのビャッシーバスパークで観光客を待つガイド達(右側)
また、観光客の中には横柄な人もいて、ガイドすることを持ちかけると怒りだす人もいたりするし、ともすれば人種差別的に見下す人もいる。日によっては、全く収入が得られず、自らの交通費や食費を差し引くと赤字になることもしばしばある。
それでも毎日の飯の為に、家族や子供の為に、断られても、価格を下げてでも再交渉しようとする彼らを私はしつこいとは思わないし、思えない。
ガイドが待機する場所は屋外で道路に近いことも多く、車が巻き上げる土埃や、ただでさえ大気汚染が深刻なネパールの中でも微小粒子状物質(PM2.5)が特に多い場所であり、過酷な環境なのだ。
会社勤めではなく安定収入の無いローカルガイドの彼らは、そんな環境でもめげずに今日も観光客に果敢に話しかけていく。
もし、ローカルガイドに接する機会があり、彼らが好印象であなたが気に入ったならば、ガイドを依頼して
色々と話を聞いてみるのもいいだろう、仲良くなれば様々な裏情報も教えてくれるローカルガイドは、ネパール通になるには重要な存在でもあるのだ。
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