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急速に失われつつある(ゆるい)ネパール

(ゆるいアジア)という言葉を耳にされた方もいるかもしれない。

人によって受け取り方は違えど、のんびりとしたアジアの途上国の情景を指すものである。

現在のように、グローバル化も進んでおらず、アジアの途上国がまだまだ発展途上であった時代、日本人沈没者も多くいた頃のネパールは今よりもずっとゆるく、抽象的に言えば遥かに豊かだった。

その頃は、町を歩けば「Are you Japanese?」「ニホンジンデスカ?」とよく声をかけられたものだが、今では「Are you Chinese? or Korean?(あなたは中国人?それとも韓国人?)」「ニイハオ」と声を掛けられる。

日本語で話しかけられることは、激減どころか、ほぼなくなってしまった。

グローバル化が進んだ時代になり、日本の国力が落ち、若者の人口が減少する中で、特に若い日本人旅行者は激減してしまった。反面増えたのが、中国や韓国からの若い旅行者達だ。タイ人やベトナム人、インドネシア人もかなり見かけるようになってきた。

今後は上記の国々だけではなく、日本を除いたアジア諸国全般からの観光客は、ぐっと増えていくことだろう。これはアジア諸国が経済的体力を身につけてきた証拠でもある。

1990年代初頭に、アジアンジャパニーズという本が流行した。

現地で沈没する日本人の情景と、彼らのその後を追ったもので、その中にネパールで沈没していた当時の若者達も収録されている、特に第一巻はお勧めだ。

当時私が初めてネパールを訪れた頃は、ネパールの若者達には彼らの夢の合言葉があった。

「American Life」「Chinese Food」「Japanese Wife」「Nepali Knife」

アメリカの生活(水準)、中華料理、日本人妻、そしてネパールのナイフ(ククリ)である。

この4つが揃った生活が、彼らの夢であった。豊かな将来の生活の夢を見ながらも、自国の誇りであるククリが出てくるところは、愛国心の強いネパール人らしさを感じさせた。

現在のネパールの、若者たち(特に男性)の合言葉をご存じだろうか?

3M、または4Mと呼ばれるものがその合言葉である。

「Money(金)」「Motorcycle(オートバイ)」 「Mobile(スマホ)」(「Muscle(筋肉)」)

これ等があれば、女性にモテモテというわけだ。なんと即物的、唯物的になったことだろう。

実際、昔と比べると金にまつわる話や、金のことばかり話すネパール人が非常に増えてきたと感じることが多い。その為か、ネパール社会もギスギスした感じが感じられるようになってきた。

スマートホンが普及し、子供たちが親のスマホでゲームをするようになり外で遊ぶ時間が減ってきたし、ダサインでも、多くの凧がネパールの大空に舞っていた風景もほとんど見られなくなった。また、他でも書いたが洗濯機のこれからの普及で、水場でわいわいと井戸端会議をしながら、村の女性たちが洗濯する光景も徐々に減っていくことだろう。

スーパーマーケットが主流になり、使い捨て文化が浸透し、サンダルや靴を修理するサルキなどの流れの職人、衣類や雑貨、果物を行商をする人々、路上でのんびりと野菜や日用品を売る人々とともに、豊かなゆるいネパールが消えていく時、あなたは何を思うのだろう。

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